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泣いて笑って、野菜の話

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2016年 10月 18日

第3回 菅原徳八さん

生産者のロングインタビューを掲載する、「泣いて笑って、野菜の話」。

夕張郡栗山町で菅原農園を営む菅原徳八さんは、みんなから「徳さん」の愛称で親しまれています。

この農園では、トマトやピーマンなどさまざまな野菜をつくっていますが、

なかでも珍しいのはショウガ。

ショウガは温暖な気候を好むことから、主要な産地は関東以西。

ほとんど北海道でショウガをつくっている人がいない中で、7年前に、徳さんはやってみようと思い立ったそう。

「まわりから、ショウガなんてできないよって、言われたりしませんでしたか?」と聞いてみると、

「そんなことないよ。地球上にある作物なんだから、できんことはないと思うぞ、あははは〜」と徳さん。

こんなふうに徳さんの豪快な笑顔とともにインタビューは始まりました。

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人のやってないことに挑戦してみたい


最初の年は、ぜんぜんダメだったよ(笑)。

だってつくりかたわからないもん。

どうしたもんかと思って、文献に頼って、今度こそと。そしたら2年目はとれたな。

ショウガの環境ってのをよく考えるようになったの。

いかにショウガのためになるかと思って。


一番のポイントは「温度と水」。

できるだけ暖かくし、そして必要なときに十分に水を与える。

養分も大事だそうですが、水で太らすようにしていったと言います。

工夫を重ねて収穫できたとき、徳さんはどんなふうに感じたのでしょうか?


感じるも何も、とれるのが当たり前。

植えたもんがとれないというのがおかしいんだもん。


とサラリとした答え。

「当たり前」と言うけれど、北海道でのショウガづくりは珍しいと話題となり、

新聞やテレビに取り上げられることも度々あったそう。


ショウガをつくりはじめて3年目には、STVのどさんこワイドがめでたく取材に来てね。

放映後、注文のファックスが15メートルくらいの長さになっていたっけ(笑)。

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徳さんはこの農園の3代目。

18歳からお父さんとともに農作業をはじめ、現在40年以上のキャリアがあります。

10年前からは有機栽培に移行。

ショウガももちろん有機で育てています。

慣行栽培の場合、収穫までに30回ほど防除をすることもあるそうですが、

徳さんのところでは農薬などは使っていないそうです。


うちは虫が出たら食べ放題(笑)。防ぎようがないしね。

雑草も抜くけれど、まあ生え放題(笑)。

でもさ、虫さんはそんなにたくさん食べないんだよ。ムダには食べない。

人間ぐらいでない? 肥満になっても食べるのをやめられないのは。

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土を健康にすることで病気にならないようにしているという徳さんの畑には、大きなミミズがいっぱいです。

そのミミズを見て「うちの稼ぎ頭だよ〜」とニッコリ。有機栽培に切り替えた理由を聞くと、

「農薬かけるのがめんどうくさいから、そのままにしていたら、案外うまくいってさ」と、

スコップでショウガを掘りながら語りつつ、有機への想いを語ってくれました。


やっぱり食べるものだからさ、健康なものを。

野菜で病気は治せないけど、病気にならないような体をつくるのが一番だからさ。

口に入れるものだから安全なものをね。

それに地産地消が一番体にいい。身土不二(*)って考え方あるでしょ。

土地でとれたものを食べるのが健康にいいって考えたときに、その範囲って20キロ以内なんだって。

20キロ以内であれば、環境や水が体にきっと合うってことなんじゃないかな?


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あんまりたいへんって感じたことないなぁ〜



徳さんはショウガ以外にも、有機栽培でトマトやピーマンなどさまざまな野菜をつくっています。

トマトだけでも18品種あるそうです。


トマトはさ、サンプルのタネをまいたら、途中でほとんど枯れちゃったんだよ。

で、サンプルをもらったメーカーに文句言ったら、すぐに飛んで来てくれて。

それからの腐れ縁でつくってるんだ(笑)。

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枯れてしまった原因は何か、理由を考える。

インタビューには冗談めかした答えが返ってきますが、ショウガと同じように、

トマトの栽培でも徳さんの研究熱心な様子が垣間見えてきました。

徳さんの畑を見回すと、ほかにもたくさんの作物を栽培しています。

作業が多岐に渡り管理がたいへんなのではないかと思ったのですが……。


20や30種類つくったってねぇ。

百姓なんだから100つくらないといっちょまえじゃないよ。

それに、あんまりたいへんって感じたことないなぁ〜。

鈍いのかなあ。ねえ、かあさん、たいへんなんてわかんねえんだよな(笑)。


すると、振られた奥様の房子さんも……。


年とったらそうなんじゃない? 

だって子育てももうないしさ。

あとは死ぬだけでしょ(笑)。

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この二人の言葉には、正直驚きました。

いつも仕事が忙しいとか、子育てがたいへんとか言ってしまうわたしにとっては、

すぐには理解しがたい境地に二人はいるのかも。

年齢を重ねれば、そんな心境になれるのでしょうか?


それはね〜、年齢じゃないんじゃない? 

たいへんって思う人は、自分の観念に振り回されているんだよ! 

自分が自分でたいへんと感じているんだから、そのへんを見極めんとな(笑)。

まずは「見聞き」をしないとさ。

いろんな経験とか、見たり聞いたりとか。

あらゆる職業の人、同業者は同じような経験をしていることが多いから、とくに異種の人の話を聞く。

そして「聞く」っていうことは、「自分に入れる」っちゅうことで考えないとさ。

相手の話を拒絶しないで、いかに型にハマらないように考えられるか。

人の言うことをさ、丸呑みできたら最高だと思うよ。

考えるのはコレ(頭を指差す)でしょ。


そして徳さんは、またまたニカッと笑いました。


楽しまなくっちゃさ〜。

人間は生まれたときから終わりに向かっているんよ。悲しいかな。

だから、人生は楽しまなきゃ!

普通は、何かやろうと思ったときに苦労するなあと思ったら避けるよね。

もちろん避けたほうが正解のときもあるけれど、現実には当たってみないとわからない。

あたってから考えるほうが楽しんじゃない?(笑)。

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こんな考えを持って、いつも何かにチャレンジしてきた徳さん。では、今後はどんなことをやってみたいのでしょうか?


このごろダメ、あんまり思いつかんでいる。ダメだなこりゃ(笑)。

ただ、60歳になったら自分のために生きるのは終わりで、残りは人のために生きるもんらしいぞ。

まあ、人を助けるなんておこがましいけどね。

いま農業をしたいという人たちに技術継承したいっていう気持ちもあるけれど、国の政策と条件的に合わないんだよね。

うちで研修したいっていっても、認定農業者じゃないと生活支援金とかも出ないしさ。


笑顔の中にときどき、徳さんの鋭く真剣な眼差しが見えました。

今回のインタビューで一番印象的だったのは、「困難さやたいへんさを感じるのは自分の心、

それを人生の楽しみだと感じるのもまた自分の心」であるという徳さんの考えでした。

徳さんが「楽しみ」と語っていた言葉の裏にはさまざまな意味が込められているのでしょう。

そして農家と言う仕事について、徳さんは最後に、こんなふうに語ってくれました。


真の自由人を目指すなら、やっぱり農家なんよ! 食うもん自分でつくるのは最高でしょ。

まあ、逆に言ったら食うにも困るときもあるけどね(笑)。

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2015年10月23日取材


*身土不二(しんどふじ) 人間の身体と土地は切り離せない関係にあるということ。その土地でその季節にとれたものを食べるのが健康に良いという考え方



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by nakiwarai_yasai | 2016-10-18 10:27 | 泣いて笑って、野菜の話


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